毎年、新入社員のフォローアップ研修を実施しています。
毎回、迷える悩める子羊のような
新人の皆さまとお会いして
たくさんの生の意見を聞くことができ
気付かされることがたくさんあります。

「業務の流れがなかなか覚えられない」
「1度しかやってないのに、”もうできるよねぇ”と先輩に無茶振りされる」
「提案しなさいと言われても、具体的な言い方が全くイメージできず、成約できないまま終わる」
「質問したい時に先輩が忙しそうだったり、恐そうで、解決できない」
「先輩達が頑張ってるのに、私は何の役にも立てていない・・・」

こんな声が毎回、判で付いたかのように出てきます。
そして極めつけが次の声です。

「私には合ってない仕事なのだと思う・・・」

このまま放っておくと、自らご卒業されてしまうかもしれません。

たった4、5ヶ月やそこらで、完璧に覚えられる仕事ではないのに
いま活躍している先輩達も、最初の1年は”迷える子羊”だったのに
慣れれば、喉元過ぎれば、何とかなるモノなのに

”だから焦らなくていいんだよ”
”でも焦っちゃうよね、すごくわかる”
”でも、ゆっくり解決することだから”
”今は、慣れて、しっかりと身に付けていく大事な時間”

そんなことを、
日々の心労に共感しながら
毎回、柔らかく説いていくと、
研修開始時の不安そうな表情が
帰り際には、満面の笑みを浮かべて退室していく姿を見て
全国にはこんな新入社員がいっぱい居るんだろうなと思うのです。

ただ、研修に参加できなかったとしても
ちょっとしたひとことや、簡単な事前の説明、
そして業務時間中の接し方で、
十分 ”前に向ける心持ち” を持たせることも可能だと思います。

これだけ人手不足と言われながら、
手間暇かけて採用した
”輝くはずの金のタマゴ達”を
輝かせる体制が整わず、
その主役に「私には合ってないと思う」と言わせてしまうのは
大方、体制に改善すべき点があると言っても過言ではないでしょう。

先日、とある企業の方からこんな話を聞きました。
入社5年目くらいの優秀な人材が退職するケースが増えていると。
金融業界の20代後半若手社員の転職が増加傾向にあることは
よく耳にしますが、他業界でもあるのだと。

その企業の若手社員の退職理由が
「自分はスペシャリストになりたいのに、人事は全員ゼネラリストにしようとしている」
「私はゼネラリストでいろいろ経験したいのに、総務部からずっと出られない」
「個々の潜在要望を確認しないまま、ジョブローテーションされてもモチベが下がる」
「おまけに北海道から九州まで全国の支社に転勤なんて言われたら、その辞令そのものがトリガー!」
だそうです。

でも、スペシャリストとして活躍することに、
他部署の現場の声や体験が生かされることは間違いなく
その現場の先輩達から教わり”愛ある叱咤激励”に包まれていくうちに
確実に企業人としての人間力は向上し
そしていろんな地域の方々と接していくうちに
人としての捉え方や考え方の器量に深みが増していく・・・

それは経営者でも同じです。
やはり現場の経験があるトップの意見には
確固たるリアリティーが存在しており
その言葉には説得力があります。
仮に、現場経験はないとしても、
長きの人生経験において
説得力を帯びている方々もたくさんいらっしゃいます。

稀に現場経験のない
若手のスペシャリストやリーダー格は鼻息は荒いものの、
説得力が弱く、なかなか賛同を得られない
残念なケースも多いものです。
結果”人徳”が無い状態になるんですよね。
  ※人徳:名を残すような事が出来る才能があり努力を繰り返す人。

それによって人からの信頼尊敬されて、
なぜか周りの人々にもいい影響があり、人々が集まってくる

いっぽうで管理部門で何年か経験することもこれまた重要で、
会社の”四つの季節”にひもつくイベントの経験を積むと
判断力や応用力が身に付き、社内から絶大な信頼を得ることにもなる・・・

いずれも、意味と目的、効果がちゃんと事前に動機付けされているかどうかです。
よくビジョンという言葉も耳にしますが、
若手社員に社員としてビジョンを持ってほしいというのなら
より明確な役割ミッション、やりがい、成果、などの
イメージ付けを企業側や先輩社員側が用意する必要があります。

結局、スペシャリストであろうが、ゼネラリストであろうが、
どんな立場役割であっても関係する相手が
自分のことを、自分たちのことを
少しでも理解してくれていると察知すれば
こちらの言うことを素直に受け入れ易い。
これだけは変わらないんですよね。

では、前段のスペシャリスト希望で、
全国転勤にNOを突き付けた若者にはどうすれがよかったのか?

やはり事前の丁寧な説明と、
しっかりとした動機付けが重要なんです。

例えば、各スペシャリストの先輩達から、
知っておいたほうが良いこと、知らなくて失敗したこと、
ジョブローテーションで大変だったこと、”食わず嫌い”でやってみたら楽しかったこと
壁にぶつかった際の乗り越え方
なんていうプレゼンがあったり、
そんなことを、若者達が納得いくまで
個々に相談できる場や手段があれば
本人達も多少の迷いや先走るマイナスイメージが払拭されるのかもしれません。

また、転勤に関しても、
いまの時代SNSで何がウケるかわかりません。

そう思うと、年に1度や、2度、
各支社の人事担当や地域自慢の名物社員が
若手社員を一同に介した場に登場して、
地域プレゼンなんてあっても良いかもしれません。

おらが自慢のうまいもの、
地域の人柄やコミュニティ
車で簡単に行けるレジャーやサークル

例えば山形宮城の芋煮会や
広島カープ応援、
沖縄のビーチパーティー、
徳島の阿波踊りに高知のよさこい祭り
函館五稜郭のゴールデンウイークの桜花見
挙げるとキリがない、地域のご自慢ネタ。

そして何よりもその場で話している地域の先輩社員を見て

北陸にああいう人がいるんだったら、北陸住まいもいいかな
九州にこんな先輩がいるのなら、
こんな環境なら、東北もいいかな
2年くらいの期間なら、東京から離れて”米処酒処新潟”もいいかな・・・

という風に、転勤することを前向きに捉えられるかもしれません。

いずれも未来前途ある若者に、
未経験から来る勝手な想像だけで
”自分に合ってない!”なんて思わせること自体が残念ですよね。

秋から冬にかけては
張り詰めた日々と思い悩んだ日々に
結論を出したくなる時期かもしれません。
その前に策を打って
「この仕事を選んでよかった!」と思ってもらえるように
人材育成マネジメントをしていきたいものです。